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駄文~大戦?~:月夜の晩

駄文~大戦?~

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★ 月夜の晩


月夜の晩


何故この時間に目覚めたのか・・・。
窓を開け、月を見上げれば、まだ朝は遠いことを示している。
今宵は満月。
かたっ。
下のほうから音が聞こえた。
周瑜はその方向に視線を向け、驚いてその名を呼んだ。
「伯符!」
「よぉ」
ちょうど、周瑜がいる窓の下。
ひっそりと座っている孫策の姿があった。
「どうしたんですか?そんなところで」
「いや、よっと。あれがそろそろ咲きそうだと思って・・・な」
孫策が窓を上りながら、首だけでくいっとそれを指し示す。
「ああ、『かぐや』ですか」
周瑜の部屋の前には花壇がある。
庭師が季節ごとに綺麗な花を咲かせていて、孫策は夜だけ見に来ていた。
月夜に見る花がいいそうだ。
そういえば、孫策が最近様子を見に来ていると言っていた花があった。
「かぐや?」
孫策が椅子を二個持ってきて、窓の側に置いた。
片方の椅子に座って周瑜を見る。
周瑜も椅子に座った。
「そう、月夜に一晩だけ咲くから『かぐや』。伯符、知らなかったんですか?」
「名前など知らん。俺は月姫と呼んでた」
「月のお姫さま・・・。伯符らしい」
くすくすと笑う周瑜の横で、孫策はちょっと脹れた顔をしている。
「今日、咲くはずなんだ。蕾がほころび始めてたから」
そう言って花を見つめる。
その姿を見るとはなしに見ながら周瑜が呟く。
「何故・・・」
「ん?」
「どうしてそんなにかぐやが見たいんです?伯符だってこの花を見たことがないんでしょう?」
「ただ、見たかった。それじゃダメか?」
周瑜は無言だった。
「最初は純粋にそう思ったんだ。そしていつの間にか、恋に落ちた」
周瑜が眉をひそめる。
孫策が笑った。
「まあ、聞けよ。少しづつ葉が伸び、蕾が出来るうちに妙な気分になってな。俺が見てると喜んでくれるんだ。・・・公瑾、その顔はやめろ。本当なんだ。俺が見てると風もないのに揺れるんだぜ」
その顔は無邪気だ。
なんの偽りもないように見える。
「うまく言えないんだけど、女のような気がして、さ。月姫と名づけた。俺だけで花が開くのを待とうと思ったんだが・・・お前が起きてくれてよかった」
孫策は震える仕草をした。
「実はちょっと寒かったんだ」
見れば孫策は薄着。
暖かくなったとはいえ、夜は冷える。
周瑜は立ち上がった。
「何か羽織るものを持ってきます」
「いい」
孫策が周瑜の手を掴む。
「でも、風邪でも引いたら」
「近くにあるからいい」
「え?」
孫策は立ち上がった。
自然に周瑜の手を引っ張る形になって、周瑜のバランスが崩れる。
孫策が周瑜を受け止める形になった。
「ほら。あったかくなった」
「伯符。また悪い癖が」
孫策は人がいようといまいとお構いなしに抱きつく。
男同士だし、周瑜はあまり気にしなかったが、周囲の目が少しうるさい。
「伯符。私達がなんて言われてるか、知らないわけじゃないでしょう?」
「ああ、孫家の息子は周家の息子を嫁に貰うつもりだ・・・か」
言っておかしそうに笑う。
「笑い事では・・・」
「ああ、悪い。そういや、親父にも言われたよ。どうにかして、公瑾を嫁にしちまえ、ってな。嫁になってくれ、公瑾」
周瑜は絶句する。
まったくこの親子は何を考えているのか!
強引に孫策から離れると周瑜は孫策に背を向けた。
「本当に俺のところに来ないか?」
即答しようとして、孫策の声音に今までになかった真剣さを感じて振り向く。
「親父は天を掴もうとしている。その為にはお前が必要だと言っていた。公瑾、俺と一緒に来いよ」
周瑜が少しうつむく。
「私が断らないと知って・・・言ってるんですか?」
「もちろん」
周瑜は苦笑した。
「全くあなたという人は・・・」
「公瑾、あったかい家庭を作ろう」
「作りません!だから、抱きつくのはやめて下さい」
孫策は抱きしめた周瑜ごしに窓を見た。
「公瑾、あれ」
「え?」
視線を向けると、いつの間にか『かぐや』の花がゆっくりと開いていくところだった。
2人は窓に近づき、花が開くのをじっと待った。
やがて、完全に花が開く。
清楚な白い花びらが、一身に月明かりを浴びて輝いている。
「綺麗だな。月姫」
孫策の声が優しく響く。
周瑜には、もう訂正する気はなかった。
この花は『かぐや』よりも『月姫』のほうがふさわしいような気がしたからだ。
そういえば・・・と思い、周瑜が窓を離れた。
戻ってきた時には、手に酒瓶と杯を持っている。
「飲みましょうか」
孫策に杯を渡すと酒を注ぐ。
周瑜も孫策に注いでもらう。
お互いに一気に飲み干し、また注ぐ。
「花を見ながら飲む酒もいいものですね」
「ああ、今日は特にな。今日しか咲かない花を見ながらの酒は格別だ」
孫策が月明かりに照らされ、その顔はいつもより男らしく見えた。
体つきもがっしりしてきた。
戦に行くのに鍛えていると言っていたのを思い出す。
こうして、穏やかな時間を過ごせるのはあとどの位だろうと、孫策の呼吸する胸をぼんやりと見ていた。
「どうした?」
視線を感じたのか、孫策がこちらを向いた。
「いえ・・・何でも」
周瑜はごまかすように孫策に酒を注いだ。
何回か酌み交わすうちに、酒がなくなったようだ。
孫策が酒瓶を逆さにして、酒がなくなったことを示す。
「空だ」
「持ってきましょう」
周瑜が立ち上がる。
孫策の手から酒瓶を受け取ろうとして、手が触れる。
孫策の指から熱が伝わる。
ふと、この指に口付けしたい気分にさせられる。
気づけば名を呼んでいた。
「伯符」
「ん?」
周瑜の方を向いた孫策の唇に自分の唇を重ねる。
孫策の目が見開かれる。
孫策も軽く酔っていたのだろう。
普段ならあっさりとかわすこともできるだろうが、反応が遅れた。
触れていたのはたった数秒のこと。
「無粋ですね。口付けをするときは目を閉じたらどうです?」
孫策は口をパクパクさせている。
孫策がこんなに動揺している姿を見るのは始めてだ。
周瑜は笑いながら、酒を持ってきます、と言って部屋を出た。
出た途端に椅子から立ち上がる音が聞こえる。
予定とは場所が違ったが・・・。
くくっと笑って周瑜は歩き出す。
たまには伯符を動揺させるのも悪くない・・・。

まさか、公瑾から口付けされるとは思わなかった。
いつも、冷静な顔を崩さない周瑜。
それを壊したくなったのはいつだったか・・・。
最初に抱きついた時はかなり驚いていたっけ。
それが嬉しくて、何度も抱きついた。
最近では慣れてしまったのか、軽くあしらわれてしまっていたが。
「くそ。やられた」
なぜか頬が赤くなる。
やわらかいその感触がまだ残っていた・・・。

「どうして、公瑾は女じゃないんだろうな?女だったら俺の嫁さんにしてやるのに」
周瑜が琴を弾き終わった後に言ったことがある。
あの頃の周瑜はとてもかわいらしくて、本当に女と見間違う者がいたほどだ。
周瑜は困ったように微笑んでいた。
あの頃の自分はまだ子供で、周瑜を傷つけていることに気づいてなかった。
男でも、女でも、公瑾は公瑾なのに。

「嫁にすればいいじゃないか」
「父上?!」
孫策が周瑜を嫁にする、と宴の席でからかわれた時だった。
「公瑾は男ですよ」
「好きなんだろう?」
「でも嫁には出来ません」
「なんだ、妾か」
「父上!」
あまりの大声に孫堅はたしなめる。
「伯符、酒の席だ」
孫策は周りを見回した。
皆、ほろ酔い加減で宴を楽しんでいる。
そう、孫策たちを酒の肴にして。
受け流してしまえばいいのだ。
しかし、口は勝手に動き出す。
「父上。俺は公瑾が好きです。でもそれは親友としてで・・・」
本当にそうなのだろうか?
そのまま黙り込んでしまう孫策に、孫堅は耳元で囁いた。
「周瑜が好きなら、抱いてみればいい」
「父上?」
孫策は自分の父親の顔を凝視する。
「自分でもわからないんだろう。周瑜が男だからと気持ちを抑えていると、いつか抑えがきかなくなるぞ」
孫堅は孫策から離れて、酒を注ぐ。
「お前達は常に一緒にいたが、これからはそうもいくまい。戦場に出れば、いつ死ぬかわからない。悔いを残すなよ」
そんなことを言われても、わからないものはわからない・・・。
酒をぐいっと飲むと孫堅は孫策に向かって言った。
「周瑜は俺が貰うぞ」
自分の息子の表情を見て、孫堅は満足そうに笑った。
「まだ、子供だな。伯符」
子ども扱いされたことが、恥ずかしくて赤くなる。
一体自分はどんな顔をしていたんだろう。
その後に真剣な声で父は言ったのだ。
周瑜の頭脳が欲しい、と。
周瑜を離すな、と。
父に認められた周瑜にひどく嫉妬を覚えたものだ。

なぜこんなことを思い出すのだろう?
今日はひどく感傷的だ。
酒に酔ったのか?
それとも他に?
月は明るく孫策を照らす。
孫策は呟いた。
「これはお前の仕業か。月姫」
花は月明かりの中、静かに揺れていた。
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