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駄文~大戦?~:大喬

駄文~大戦?~

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大戦風味


大喬


ぱん!
小気味いい音と、人々がざわめく声が聞こえる。
後から、じわじわと頬に痛みを感じた。
私を叩いた人は、いつもとは違った冷たい瞳で私を見ている。
軍を率い、皆の命を一手に引き受けている人・・・。
「殿」
言った本人をじろりと一瞥し、また私を見る。
「大喬、お前は俺の言ったことを聞いていたのか?ここは戦場なんだぞ」
何も答えられない。
そう、私は戦場に行ったのだ。
皆の反対を押し切って。
孫策さまがあれほど念を押したのに、私はその命令を無視し、戦った。
そして敵兵に撃たれる所を周瑜さまに救われた。
結果、周瑜さまは軍議に出ていない。
私を庇って怪我をしたのだ。
「今、周瑜を失うわけにはいかないんだ。軍が周瑜を失ったら・・・その時は、大喬」
私は孫策さまを見つめた。
「覚悟しています」
私を見つめていた孫策さまが、とても悲しい表情をした。
それは一瞬のこと。
誰も気づかなかっただろう。
もしかしたら、周瑜さまがいれば気づいたかもしれないけれど・・・。
ふう、と孫策さまが息を吐いた。
「と、いうことだ。後は周瑜次第だな。他に何もなければこれで終わる」
皆、異議を唱えない。
「では、明日、この時間に軍議を開く。遅れるなよ」
殿じゃあるまいし・・・と言う声が聞こえる。
「甘寧!お前が遅刻常習犯だろ!」
くすくす笑いと、へいへい、という声が遠くなっていく。
皆、部屋を出て行った。
部屋にいるのは、私と孫策さまだけ。
孫策さまは叩かれた頬に触れた。
「痛っ」
「すまねぇ。これでも加減したんだが」
そうだろう。
孫策さまが本気をだしたら、私は吹っ飛んでいたかもしれない。
規律を破った私を、そうしなければ皆に示しがつかなかったから。
孫策さまの表情が、手が、優しくて・・・涙が出てくる。
「だ、大喬。そんなに痛むのか」
ふるふると首を振る。
「ごめ、ごめんなさい・・・私」
孫策さまはそんな私をそっと抱きしめてくれた。
「大喬」
やさしい声と暖かい胸で、私はますます泣いてしまった。
「無事でよかった」
でも周瑜さまは・・・。
見上げると孫策さまの顔が微笑んでいる。
「公瑾はそう簡単には死なない。大丈夫だ」
言って私を強く抱きしめる。
「大丈夫だ」
それは自分に言い聞かせているよう。
それから私が泣き止んだ頃、孫策さまは言った。
「これから公瑾のところに行こうと思っているが・・・どうする?」
私は迷わず答えた。
「行きます!」

周瑜さまの部屋に近づくにつれ、人の行き来が激しくなっていった。
その中の一人が孫策さまに気づき、声をかける。
「孫策さま!ちょうどよかった」
「どうした?」
「周瑜さまが」
言った側から走り出す。
私もそれに続いた。
さすがに男の人の足にはかなわなくて、置いていかれる。
切れ切れに聞こえたのは毒、熱、薬という単語。
周瑜さまの部屋に着いたときには、孫策さまは周瑜さまの寝台の側にいた。
寝台に横たわっている人を見てぞくりとする。
普段、陶器のような綺麗な顔はとても青白く、もう死人なのではないかと思わせる。
苦しそうな息遣いで、その人がまだ生きているとわかるけれど・・・。
「あ・・・」
声がでない。
「大喬・・・」
孫策さまが私を振り向く。
「薬を戻してしまうんです。このままでは」
側にいた医師の声が聞こえる。
何を言っているの?
「大喬。出たほういい」
私を部屋から連れ出そうとする孫策さまの腕にすがる。
「孫策さま。私もそばに」
います、という言葉は、孫策さまの冷たい表情に飲み込まれた。
「大喬、出て行け」
「あ・・・」
恐い。
孫策さまが恐い。
思わず孫策さまから離れた。
「朱治」
孫策さまは朱治さまを呼ぶと何か話していた。
その間も私を見ない。
私は朱治さまに促されるまま、部屋を出た。
孫策さまから離れると恐さもなくなって、この場を離れたくない気持ちでいっぱいになる。
私の足は自然に扉の前で止まっていた。
「さあ、大喬さま」
朱治さまが促すけれど、私は・・・。
「朱治さま。私・・・」
「わかっています。しかし、あなたがいても何もできない。違いますか?」
確かにその通りだ。
孫策さまにもそれがわかってる。
そして、周瑜さまがもし・・・。
想像に震えが走る。
「朱治さま。でも私は・・・」
朱治さまは、私を見て少し困った顔をして微笑んだ。
「では、少しの間だけ。邪魔にならない場所に移動しましょう」
私は扉の前から少し離れた。
そうしている間にも人の行き来が激しい。
私はここで祈ることしかできない・・・。
唇をかみ締める。
「公瑾!飲め!」
孫策さまの声が聞こえた。
私は思わず扉の前に行こうとしたけれど、朱治さまに肩を掴まれた。
「行ってはいけません」
「朱治さま・・・」
朱治さまの力は強くて振りほどけない。
「公瑾。俺は・・・お前を失いたくないんだ!」
孫策さまの・・・心からの叫びを聞いた気がした。
孫策さま・・・。
涙が溢れて、頬を伝う。
「あなたが規律を破った結果を、よく見ておくといい。我らはいつもこんな死線を繰り返しているんですよ。何度も、何度も」
朱治さまの静かな声音に、朱治さまを見上げる。
朱治さまは静かな、落ち着いた顔をしていた。
今、周瑜さまは死線をさまよっているというのに、どうしてそんな顔ができるんですか?
それとも、もうこんなことはよくある出来事と、日常の事だと慣れてしまったのですか?
それは・・・それは、とても悲しい事です。
朱治さま。
「あなたと孫策殿はよく似ている」
突然の言葉に戸惑う。
私と孫策さまが似ている?
「朱治さま?」
「私達の気持ちなど、孫策殿は無視して先陣をきる。あの方と同じように・・・」
「朱治さま」
あの方とは、もしや・・・。
「貸せ!」
がしゃんと音がした。
「孫策さま!」
部屋の中で誰かが叫んだ。
「孫策さま」
傍に行きたいのに、朱治さまの手が私をがっちりと掴んでいて離さない。
「さあ、そろそろ行きましょう」
私は朱治さまに強引に自室に連れて行かれた。
周瑜さま・・・。
孫策さま・・・。
それからは自室で祈ることしかできなかった・・・。

朝方、誰かが扉をコンコンと叩いた。
慌てて扉を開けると、そこには孫策さまがいた。
「大喬」
少し隈ができていて、疲れた顔をしている。
でも私を見て微笑んでくれる顔は、いつもの優しい孫策さまだ。
孫策さまを部屋に招くと、孫策さまは寝台に座った。
私もその横に座る。
「公瑾は無事だよ」
「孫策さま」
孫策さまは私を抱きしめた。
「公瑾も、お前も無事でよかった。・・・本当に・・・よかった」
「孫策さま。えっ?」
孫策さまの体重が私にかかってきた。
支えきれなくて、寝台に倒れこむ。
「そ、孫・・・策・・・さま?」
規則正しい息遣いが孫策さまから聞こえる。
そっと孫策さまを見ると、孫策さまの瞼は閉じていた。
安心したんだろう。
どうやらそのまま眠ってしまったようだ。
「孫策さま・・・」
ありがとうございます。
心の中で呟く。
安心すると、眠くなってきた。
孫策さまの隣に、そっと体を横たえる。
起きたら周瑜さまの所へ行こう。
そして、周瑜さまにもありがとうと言おう。
そんなことを考えながら、眠りに落ちていった。
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